特定技能で「転職したい」と言われたら|引き止められる範囲と、その前にできること

特定技能で「転職したい」と言われたら|引き止められる範囲と、その前にできること

特定技能の社員が転職を希望したとき、会社が最初に考えるべきなのは「どうすれば辞めさせずに済むか」ではありません。
確認する順番があります。

そもそも特定技能は、一定の範囲で転職を認める制度です。
違約金を定める契約は労働基準法第16条で禁止され、保証金や違約金などを伴う契約を認識しながら特定技能雇用契約を結ぶことは、受入れ基準上も問題になります。

一方で、勤務先が変わるなら、本人側では在留資格変更許可申請、会社側では契約終了などに関する届出が必要になります。
これらは「辞める・辞めない」の交渉とは別に進める手続きです。

転職の申し出を受けたら、まず契約内容を確認し、その次に必要な申請・届出を洗い出す。
企業側に求められるのは、転職を止めることではなく、制度に沿って送り出すための実務です。

この記事を運営するG-Star HR Linkは、ネパール現地に自社の日本語学校とトレーニングセンターを持つ人材紹介会社で、出入国在留管理庁の登録支援機関でもあります(登録番号25登-011561)。
在留資格の申請業務は連携する行政書士が担当し、制度・法令に関する記述は監修を受けています。
条文・期限は関係法令と入管庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」に基づき確認しています。

「転職したい」と言われたら、企業ができること・できないこと

転職の相談を切り出す外国人材と、それを受け止める日本人管理者の面談

「転職したい」と言われたら、企業は何ができて何ができないのか。
特定技能の転職ルールを正しく理解することが、トラブル防止につながります。

前提|特定技能は、もともと「転職できる制度」として設計

技能実習と同じ感覚で捉える企業は少なくありません。
技能実習は原則として実習先の変更が制限されますが、特定技能は異なります。

入管庁「特定技能制度に関するQ&A」は、転職が認められる範囲を「同一の業務区分内又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」と説明しています。
受入れ機関や分野を変える場合は、在留資格「特定技能」の変更許可申請が必要です。
つまり、特定技能は転職を制度上認めており、受入れ企業が一方的に転職を禁止できる仕組みではありません(両制度の差は技能実習と特定技能の違い|7つの軸と2027年の制度転換で変わる選び方)。

さらに、特定技能1号は令和8年6月末で42万5,961人。
令和7年6月末から9万2,838人増えており、制度の拡大とともに転職を前提とした雇用管理も重要になっています。

採用後の定着策を考える際も、この前提を外せません。

退職の申し出は、雇用契約の期間で扱いが変わる

特定技能だから特別な退職ルールがあるわけではありません。
無期契約なら、民法第627条第1項により、労働者はいつでも退職を申し出ることができ、申入れの日から2週間を経過すると雇用契約は終了します。会社の承諾は退職の成立要件ではありません。

一方、特定技能雇用契約で多い有期契約は、民法第628条により、原則として契約期間の途中で一方的に退職することはできず、「やむを得ない事由」がある場合に解除できます。
ただし、1年を超える期間を定めた契約では、労働基準法第137条により、契約開始から1年を経過した後は、労働者は申し出によっていつでも退職できます。契約期間が1年ちょうどなら、この特例の対象外です。

なお、契約期間が残っているからといって、本人の意思に反して働かせ続けることはできません。
労働基準法第5条は強制労働を禁止しています。

まず雇用条件書で契約期間を確認し、退職日の調整は本人との話し合いで進めるのが基本です。

よくある引き止め策と、その法的な扱い

やろうとしがちなこと

法的な扱い

根拠

「途中で辞めたら違約金を払う」と契約や誓約書に書く

労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約は禁止されています。

労働基準法第16条

「3年勤めたら教育費の返済を免除」「途中退職なら残額を一括返済」とする貸付契約

勤務継続や途中退職と結び付けて、不当に金銭その他の財産を移転させることを予定する契約は、特定技能の受入れ基準上問題となり得ます。該当する場合は欠格事由となり、5年間受入れが認められない場合があります。

上陸基準省令(特定技能1号)/運用要領(令和8年8月)

在留カードやパスポートを会社で預かって返さない

外国人の失踪防止などを目的として、旅券や在留カードを取り上げたり保管したりする行為は、不正行為として扱われます。

運用要領(令和8年8月)/労働基準法第5条

同業他社に連絡し、採用しないよう申し合わせる

第三者と謀り、就業を妨げる目的で労働者の国籍などに関する通信をすることを禁止しています。

労働基準法第22条第4項

「転職したら在留資格がなくなる」と伝える

誤り。転職そのものによって在留資格が直ちに失われるわけではありません。ただし、受入れ機関を変更して特定技能として働く場合は、原則として在留資格変更許可申請が必要です。

運用要領(令和8年8月)第7章

出典: 民法・労働基準法の各条文、および出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月・PDF)をもとに作成

特に見落とされやすいのが、教育費や渡航費の立替金です。
運用要領は「一定期間働けば貸付金を免除」「途中退職なら残額を一括返済」とする契約を、不当に財産の移転を予定する契約の例として明示しています。
「◯年働けば返さなくていい」という条件も、善意でも問題になり得ます。

特定技能の転職手続き|在留資格変更許可申請と14日以内の届出

次に確認するのは入管への申請と届出です。誰が、いつ、何を提出するのかを順番に整理しておきましょう。

勤務先が変われば、同じ「特定技能」でも在留資格変更許可申請

勤務先が変われば、在留資格が「特定技能1号」のままでも、在留資格変更許可申請が必要です。

入管庁の運用要領は、転職によって指定書に記載された特定技能所属機関を変更する場合、在留資格変更許可を受けなければならないとしています。標準処理期間は1か月~2か月です。

ここで注意したいのが、2026年10月1日を境にした手数料の変更です。
9月30日までに受け付けられた申請では、変更許可の手数料は6,000円(オンライン5,500円)でした。
これに対し、10月1日以降に受け付けられる申請からは、許可された在留期間に応じて金額が変わります。
特定技能1号で該当し得る「6月超1年未満」は窓口25,000円・オンライン21,000円、「1年」は窓口33,000円・オンライン27,000円です。

なお、10月1日以降、オンライン申請の手数料は収入印紙では納付できず、コンビニ決済または銀行決済となります。
転職手続きでは、申請時期だけでなく、いつ受け付けられた申請なのかも確認しておきましょう。

提出書類の全体像は特定技能の必要書類と申請手続きの流れ|つまずきやすい7つのポイントにまとめました。

申請中は、新しい会社で働けません

特定技能から別の会社へ転職する場合、在留資格変更許可が下りる前に、転職先で働き始めることはできません。
入管庁の運用要領も、在留資格変更許可申請中は変更予定の就労先での就労活動を認めていません。

一方、現在の会社との雇用が続いているなら、在留期限まで従来の活動を続けられます。
在留期限までに変更申請をしていれば、入管法第20条第6項の特例期間により、処分時または従前の在留期間満了から2か月を経過する日の早い方まで、従前の在留資格による活動を続けられます。
したがって、退職日を先に決めると無収入期間が生じる可能性があります。

許可後に退職日を設定できるか、転職先・本人・現在の会社で早めに調整しておくと安心です。

特定技能の転職・退職で誰が何を出すか|14日以内の届出を一覧で確認

特定技能外国人が退職して転職するときは、現在の受入れ企業だけでなく、本人にも入管への届出があります。

さらに、退職によって受入れが困難になった場合など、会社側に別の届出が必要になることもあります。

特に入管への随時届出は、原則として事由が生じた日から14日以内です。
郵送の場合は「14日以内の消印」ではなく、地方出入国在留管理局・支局に届出書が到達している必要があります。

誰が

何を

いつまでに

提出先

いまの受入れ企業

特定技能雇用契約の終了に係る届出(参考様式第3-1-2号)

契約終了日から14日以内(必着)

地方出入国在留管理局・支局

いまの受入れ企業

登録支援機関との支援委託契約を終了する場合は、その届出

事由発生から14日以内(必着)

地方出入国在留管理局・支局

いまの受入れ企業

外国人雇用状況の届出(離職)。雇用保険被保険者なら資格喪失届で兼ねる

被保険者は離職の翌日から起算して10日以内/被保険者でない場合は翌月末日まで

ハローワーク

本人

契約機関に関する届出(契約の終了・新たな契約の締結)

事由が生じた日から14日以内

出入国在留管理庁長官

本人

在留資格変更許可申請

変更の事由が生じたときから在留期間満了日以前

地方出入国在留管理局・支局

出典: 入管法第19条の16・第19条の18、出入国在留管理庁「特定技能所属機関からの随時届出に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(令和7年6月・PDF)、厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」をもとに作成

本人側の「契約機関に関する届出」は、入管法第19条の16に基づく本人自身の義務です。
会社が「特定技能雇用契約の終了」を届け出たからといって、本人の届出まで済んだことにはなりません。
退職時には、本人にも14日以内の届出が必要であることを伝えておくと安全です。

また、転職の場合は、単に在留期限が残っているからそのまま新しい会社で働けるわけではありません。
出入国在留管理庁は、特定技能外国人が転職する場合、原則として在留資格変更許可申請が必要と案内しています。

ハローワークへの外国人雇用状況の届出も別制度です。
雇用保険被保険者なら資格喪失届で兼ねられ、離職の翌日から10日以内。
被保険者でない場合は翌月末日までです。

届出を怠ったり虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象となります(受入れ後の届出全体は特定技能の定期届出は年1回になった|4月〜5月に出す書類と提出手順)。

自己都合退職なら「受入れ困難に係る届出」は不要。ただし、退職理由の確認が必要

特定技能外国人が自分の意思で転職するために退職する場合、受入れ困難に係る届出は必要ありません。

入管庁のQ&Aも「自己都合による退職の場合は、特定技能雇用契約の終了に係る届出のみ」と明記しています。
退職後は、契約終了の日から14日以内に終了届を提出します。

ただし、「本人から退職したいと言われたから自己都合」と機械的に判断するのは危険です。
特定技能の受入れ企業には、同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないことが求められます。


運用要領は、希望退職の募集や退職勧奨に加え、賃金低下・賃金遅配・過度な時間外労働・採用条件との相違など、労働条件の重大な問題があったと労働者が判断した場合も例示しています。

この基準では、非自発的離職者を1名でも発生させると不適合になります。
「残業時間が聞いていた話と違った」など、本人の退職理由に会社側の労働条件が関係していないかを確認してから、届出の種類を判断しましょう。
判断に迷う場合は、管轄の地方出入国在留管理局への相談が案内されています(残業の扱いは「もっと残業したい」と言われたら|外国人材の給与設計と36協定の線引き、会社側から雇用を終わらせる判断は外国人材を解雇するときの手続き|在留資格への影響と、残る支援義務)。

見落とされがちな点|転職活動中の空白期間も特定技能1号の5年に含まれる

特定技能1号で在留できる期間は、原則として通算5年です。ここで見落としやすいのが転職活動中の空白期間です。

入管庁は、特定技能1号で在留中の失業期間に加え、在留資格変更許可申請中の特例期間も通算在留期間に含めると明記しています。
つまり、転職先が決まるまで3か月かかれば、その3か月も原則として5年の中に入ります。

「転職するな」と引き止めるのではなく、残りの在留期間との関係を本人に伝えることは、企業側にできる重要な情報提供です。

なお、企業の転職支援義務は、外国人本人の責めに帰すべき事由によらず契約が終了する場合に生じます。
本人の希望による転職まで、企業の義務的な転職支援の対象になるわけではありません(支援の全体像は登録支援機関とは|義務的支援10項目・費用・選び方を登録支援機関が解説、退職後の事務は外国人材が退職・帰国するときの手続き|届出が漏れる4箇所を時系列で)。

2027年の育成就労では「本人の意向による転籍」が可能に

2027年4月1日施行の育成就労では、技能実習で原則認められなかった本人の意向による転籍が一定条件で可能になります。

ただし、転籍制限期間は分野ごとに1~2年で、1年経過後なら誰でも自由に移れるわけではありません。

本人の意向による転籍には、複数の条件がある

育成就労の転籍には、やむを得ない事情による転籍と、本人の意向による転籍があります。
本人意向の転籍には、転籍制限期間の経過、一定水準の技能・日本語能力、優良な転籍先、転籍者の割合制限、民間職業紹介事業者の不関与、転籍先から転籍元への一定額の支払いなど、複数の要件があります。

単に「1年経ったから移れる」という制度ではありません。

育成就労の転籍制限期間は分野で違う|自社で1年に短縮できる場合も

本人意向による転籍の制限期間は、すべての分野で一律ではありません。

入管庁のQ&Aは、1年とすることを目指しつつ、当分の間は人材育成・人材確保などを踏まえ、分野ごとに1年から2年の間で定めるとしています。
分野別運用方針で1年を超える期間が設定された場合でも、育成就労実施者が自らの判断で1年に短縮できます。
一方、1年を超える期間を設定する場合は、昇給などの待遇向上措置が必要です。

なお、育成就労計画の認定に係る施行日前申請は2026年9月1日から始まっています。
初期費用の負担については、按分率は定められていますが、基準となる金額は主務大臣の告示で定める仕組みで、入管庁Q&Aでは「今後制定する予定」とされています。

2026年10月1日時点で金額を断定するのは避けたほうが安全です。

分野別の一覧、按分率の表、3分の1ルール・6分の1ルールといった詳細は育成就労の転籍ルールと人材流出リスク|分野別1年・2年の線引きから考えるにまとめてあります。
特定技能への接続は育成就労から特定技能へ|移行要件はA2.2相当、3年で育てる採用設計を参照してください。

本記事で押さえておきたいのは、2027年以降、外国人材の定着を「制度上、転職できないから」という前提だけでは考えられなくなることです。
特定技能ではすでに転職が認められており、育成就労でも一定の条件のもとで本人の意向による転籍が制度化されます。
企業には、制度による制限ではなく、働き続けたいと思ってもらうための環境づくりが求められます。

ネパール人材の採用、まずは現状をお聞かせください

ネパール現地に自社の日本語学校・トレーニングセンターを持つ G-Star HR Link が、
貴社のご要望に合わせ、最適な在留資格とスケジュールを無料相談でご提案します。

30分の無料相談を申し込む →

転職を切り出す理由は、会社への不満だけではありません

母国の家族とビデオ通話をする外国人材。送金という働く動機を表す図版

転職の相談を受けると、経営者はまず「会社のどこに不満があったのか」と考えがちです。
ただ、特定技能外国人が転職を希望する理由は、必ずしも現在の会社への不満だけとは限りません。

いい会社でも、家族のために転職を選ぶ人はいます

当社代表の岡本がPodcastで育成就労の転籍について話した際、

「最初に来た会社がすごくいい会社でも、母国の家族のことを考えて、1円でも高いところに行きたいと思う人はいる」

と話しました。

転職は、現在の会社への不満だけが理由とは限りません。
母国の家族へ送金している人にとって、給与は自分の生活費だけでなく、家族の生活を支えるお金でもあります。

月2万円の給与差が、本人にとってどのような意味を持つのか。
転職理由を考えるときは、こうした背景も含めて本人の話を聞くことが大切です。

この構造はネパール人は本当に辞めにくいのか|送金責任と借金構造から考える定着で掘り下げました。

転職先は求人サイトだけではない|知人・友人経由が最も多い

日本国内で次の仕事に移る外国人材は、どこから求人を見つけているのでしょうか。
厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」では、入職前の居住地が日本だった外国人労働者の入職経路は次のとおりです。

入職経路(入職前の居住地が日本)

令和7年

令和6年

知人、友人

37.8%

35.2%

求人広告(求人情報誌、インターネット)

19.1%

19.7%

日本国内の民間紹介会社

10.6%

10.8%

日本国内の学校の就職支援窓口

5.8%

4.8%

ハローワーク(窓口)

4.6%

4.6%

出典:厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」第16表(2026年8月31日公表)

この数字から分かるのは、求人広告だけが転職情報の入口ではないということです。
知人・友人を通じて仕事の情報が伝わる機会も大きく、日頃の職場環境や待遇が口コミにつながる可能性もあります。

「離職・転職が懸念される」前に、企業が抱えている課題がある

厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」では、外国人労働者の雇用に関する課題として、「離職・転職が懸念される、定着しない」は14.5%でした。

一方、「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」46.2%、「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」24.8%、「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブル」22.4%、「生活環境の整備にコストがかかる」21.9%など、より多くの事業所が別の課題を挙げています。

転職だけを切り離して考えるのではなく、その手前にあるコミュニケーションや職場環境にも目を向けることが重要です。
日頃から話せる関係をつくっておけば、転職の意思も突然の通知ではなく、早い段階で相談として聞ける可能性があります(打ち手は製造業で外国人材が辞める理由|定着する現場がやっている5つの運用)。

引き止めるより「選ばれる会社」へ|キャリアパスを一緒に描く

数年先の技能の段階と処遇をホワイトボードで一緒に描く面談の場面

ここまでの話をまとめると、企業ができることは「辞めさせない」ことではなく、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる環境をつくることです。
代表の岡本もPodcastで、こう話しています。

「でも本当にいい会社だったら別に/転職しようができようが/より長く働きますからね」

転職できる制度だからこそ、待遇や仕事の見通し、将来のキャリアを本人と一緒に考えることが、定着につながります。

「3年で帰る前提」が変わる|8年先を見据えたキャリア設計へ

同じPodcastで、代表の岡本は

「3年で帰る前提だと、給与も上げづらいし、キャリアパスも組みづらい」

と話しています。

技能実習のように3年で人が入れ替わる前提では、長期的な育成や昇給の仕組みを作りにくい面がありました。

2027年4月に始まる育成就労は、特定技能への移行を前提とした制度です。
育成就労3年から特定技能1号5年へ進めば、最長8年のキャリアを見通せます。

さらに特定技能2号は在留期間の更新に上限がありません。
「3年後に帰る人」ではなく、長く働く可能性のある人として、給与や仕事、キャリアを一緒に考えることが重要になります(特定技能とは|1号と2号の違い・19分野・受入れ上限の全体像を整理)。

昇給の根拠を、本人が家族に説明できる形にする

定着につながるのは、昇給額そのものだけではありません。
「何ができるようになれば、給与がどう変わるのか」を本人が説明できる状態をつくることが重要です。
求人票で他社の現在の月給と比較されても、自社には1年後、2年後の見通しがある。
この違いを伝えられるようにします。

具体的には、①担当できる工程・業務、②技能や役割に対応する手当・等級、③昇給の条件を整理し、日本語と本人が理解できる言語で1枚にまとめておくと運用しやすくなります。

育成就労では、1年を超える転籍制限期間を設定する場合、分野別運用方針で定められた待遇向上措置が必要です。
2年を設定する分野では、分野ごとに昇給率などの基準が示されています。
ただし、1年の分野や特定技能でも、キャリアと給与の関係を見える化しておく意味はあります。

さらに、額面だけでなく手取りも説明しましょう。
寮費・光熱費・共益費などの控除を含め、実際にいくら残るのかを本人が比較できるようにしておくと、転職の相談を受けた際にも具体的な話ができます。

相談経路を、社内と社外の二重にしておく

相談先が上司1人だけだと、その上司に言いにくい問題は表に出ません。
社内の相談窓口に加え、登録支援機関や母国語で話せる担当者など、社外にも相談先を用意しておくことが大切です。

当社が浜松のAsian Mart & Cafeで月1回開くネパール人交流会も、その一つです(外国人材が定着する会社の共通点|孤立を防ぐ「職場の外」の居場所づくり)。

それでも転職するなら、気持ちよく送り出すことも採用につながる

外国人材の入職経路では「知人・友人」が最多でした。
退職時の対応も、本人の周囲に伝わる可能性があります。
転職を無理に止めるのではなく、最後まで丁寧に対応することは、次の外国人採用を考えるうえでも大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 契約期間が半年残っています。期間満了まで待ってもらうことはできますか。

A.話し合いによって退職日を調整することは可能です。
有期契約は、原則として期間途中の一方的な退職はできませんが、民法第628条により「やむを得ない事由」があれば解除できます。

また、1年を超える有期契約では、労働基準法附則第137条により、契約開始から1年経過後は申し出によって退職できます。
なお、本人の意思に反して強制的に働かせることはできません。
判断に迷う場合は、労働基準監督署などに相談しましょう。

Q2. 転職先が決まるまで、今の会社で働き続けてもらえますか?

A.差し支えありません。
在留期間が残っていれば、現在の雇用契約に基づく就労を続けられます。
在留資格変更許可申請の標準処理期間は1~2か月です。
なお、失業中の期間も特定技能1号の通算5年に含まれます。

一方、変更許可前に転職先で働くことは認められません。
許可が下りるまで現在の会社で働く方法も含め、本人・両社で退職日と入社日を調整しましょう。

Q3. 転職されると、次に特定技能外国人を受け入れられなくなりますか。

A.本人の希望による転職で、会社側に非自発的離職の原因がなければ、次の受入れに直ちに影響するものではありません。
ただし、賃金低下・賃金遅配・過度な時間外労働・採用条件との相違などが退職の原因だったと本人が判断した場合、非自発的離職に当たる可能性があります。
判断に迷う場合は、地方出入国在留管理局へ相談しましょう。

Q4. 紹介手数料を払って採用した人に途中で辞められました。費用は請求できますか。

A.紹介手数料などの採用費用を、本人の途中退職と結び付けてあらかじめ返済させる契約には注意が必要です。
労働基準法第16条は違約金や損害賠償額の予定を禁止し、特定技能でも保証金・違約金契約や、一定期間の勤務を条件に貸付金の返済を免除する契約などが問題となります。

一方、2027年4月施行の育成就労では、本人意向による転籍の場合、転籍先が転籍元の初期費用の一部を補填する仕組みが設けられます。
ただし、2026年10月1日現在、補填額の基準となる告示はまだ制定されていません。

まとめ

  • 引き止めには限界がある
    労働契約の不履行について違約金や損害賠償額を予定する契約は、労働基準法第16条で禁止されています。
    特定技能でも、一定期間勤務すれば貸付金の返済を免除する契約などは「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」に当たり得ます。
    受入れ基準に反する場合は、5年間の受入れ停止につながる場合があります。

  • 転職時は「働ける時期」を間違えないことが重要
    勤務先が変われば、同じ特定技能でも原則として在留資格変更許可が必要です。
    申請中に転職先で特定技能として働くことも認められません。
    会社と本人の届出も、それぞれ期限を確認して進めます。

  • 自己都合退職でも、退職理由の確認は必要
    本人からの自己都合退職の申出だけなら、受入れ困難に係る届出は不要です。
    ただし、賃金や労働時間など雇用条件との相違が原因なら、扱いが変わる可能性があります。

  • 育成就労では本人意向の転籍が制度化
    一定の技能・日本語能力など複数の要件があり、転籍制限期間は分野ごとに1年から2年です。
    初期費用の補填額を定める告示は、現時点では今後制定予定です。

  • 辞め方も、採用と同じように情報として残る
    令和7年外国人雇用実態調査では、日本に住んでいた外国人の入職経路は「知人、友人」が37.8%で最多でした。
    だからこそ、昇給条件や手取り額、相談先を入社時から明確にしておくことが重要です。

次に読むべき記事:

「うちの条件で大丈夫だろうか」と思った時点で、まだ十分間に合う

転職の相談を受けると、まず「どう引き止めるか」と考えがちです。
ただ、特定技能では、違約金などで退職を制限する方法には限界があります。

だからこそ、退職の申し出を受けてから慌てるのではなく、普段の雇用条件や説明の仕方を見直しておくことが重要です。

たとえば、昇給の条件を書面で明確にする、給与の額面と手取りの違いを説明する、相談先を上司一人に限定しない。いずれも大きな制度変更を伴わず、今日から確認できます。

すでに退職の申し出を受けている場合も、やることはあります。
退職日と在留資格変更許可申請の時期を確認し、会社と本人それぞれの届出期限を整理する。本人にも必要な手続きを伝えておく。
こうした対応の丁寧さは、目の前の退職手続きだけでなく、今後の採用にも関わります。

まずは、自社の雇用条件書に契約期間や昇給条件がどう記載されているか、本人に説明できる状態かを確認してください。
育成就労についても、自社の分野で転籍制限期間をどう設定するのか、最新情報を確認しておきましょう。
まだ決まっていない事項は、決まっていないと伝えることも重要です。

本記事は公表情報をもとに制度を整理したものです。
最新の省令・運用要領等は、出入国在留管理庁などの公式情報をご確認ください。